0177:ミーティング



丘から見下ろすとけして広いとはいえない神戸の街並みが見えた。
「いい天気ですね、こんなゲームに参加してる事が嘘みたいに清々しい」
趙公明 から逃げて半刻。まもり達は見通しのきく丘の上の公園にいた。
「ねぇ、冴子さん」
「・・・嘘でもないし夢でもないわ」
「ふふ・・・そんなこと、わかっていますよ。貴女と同じ位に」
「そんなことより、いつまでここにいるの?あの男が追ってこないとも限らないわ」
「どうしてそう疑り深いんですか?」
風がまもりの淡い栗色の髪を撫でる。細かな髪は陽に透けて。
まもりは柵に手を寄せ気持ち良さそうに目蓋を閉じている。

まもりは考える。冴子の異常なまでの潔癖さと頑なさ。
疑心暗鬼にとりつかれ他人を寄せつけまいとして常に体を強張らせている。
(彼女を利用するとしたら・・・)

まもりは柵を背に冴子に声をかけた。
木作りのベンチを見つけると嬉しそうに腰掛ける。手招きするが冴子は立ったまま動かない。

「ねぇ、冴子さん。少し休憩しませんか?
 これから私たち、強敵とどんどん戦っていかなきゃならないんだもの。朝食にしましょ」

「・・・・・・・」
「ああ、これ?さっきの人に貰ったパン。食べなきゃもったいないですよ」
まもりは趙公明に貰った袋から美味しそうなパンをとりだし、一口大の大きさにちぎって口に入れた。
「美味しい。毒なんて入ってませんから冴子さんも食べたら?」
「私は・・・遠慮するわ」
「食欲がないんですか?奇襲に失敗したくらいで落ち込んでたら身体が持ちませんよ」
「わかってるわ、そんなこと!」
「イライラしてますね。・・・ひょっとして冴子さん、貴女、人を殺すの初めてなんですか?」
「・・・大阪の街で1人、殺したわ」
「へえ」
「どうやって?まさか素手で絞め殺したとか?」
「・・・・・・」
「喋りたくないなら喋る必要はないですよ。誰だって話せないことはありますもの」
 まもりはじっと冴子の瞳を見ている。冴子はなぜかいたたまれくなり目を逸らす。
「貴女は・・・・・・あるのね。殺人を犯したことが」

まもりは微笑み静かに語り始めた。
「1人殺して、1人逃げられました。もう1人襲ったんだけど失敗してしまいました。
 1人目は毒のついたナイフで刺したんですけど死にませんでした。
 だから毒で弱ったあの人の頭を何度も何度も石で叩いて割ったんです。それでも死ななくてこの銃で焼き殺しました。
 不思議な銃なんですよ、これ。撃った瞬間、その人は燃え上がっちゃって・・・
 私は驚いて立てなくなってしまいました。
 人も焼けると油がでるんですね。手に何滴かふりかかって・・・ほら、まだ赤く残ってる」
まもりは白い手を冴子に見せる。冴子は無表情で動かない。

「気付いたら手も服も血だらけで洗い落とすのに苦労しました」

「もう1人はペンズナイフの毒で弱らせて仲間の情報を聞き出しました。
 嘘ばかり言うから少し痛いことをしたら、簡単に洗いざらい喋ってくれました。それこそ生まれ故郷から持病。
 参加していない仲間の奥さんの名前まで。私を騙して毒を飲ませようとしたから反対に彼に飲ませてみたんです。
 そしたら気絶して動かなくなってしまって・・・」
まもりはその時の情景を思い出し、苦笑する。
「てっきり死んだと思ったのに・・・詰めが甘かったようです」
「貴女は本当に最低ね。そんな風に笑えるなんて」

「ええ。私も信じられません。ふふ。でも、意外と難しいんですね、殺人て」
まもりは鈴が転がるような声で話す。楽しそうに。

「ああそうだ。冴子さんは警察官でしたね。なら、法律にはお詳しいんでしょう?
 最初の方は外国人でしたけど、どこの国かわからないし、不思議と言葉も通じたわ。
 この場合、私はどこで裁かれるんでしょうね。一体どのくらいの罪になるのかしら」
「知ってどうするの?」
「どうもしません。予定通り殺していくだけ」
「・・・筋金入りね。まもりはどうして人間を殺そうと?」
まもりはまた微笑む。先程からこの娘は笑ってばかりいる。
「冴子さんには秘密。誰にも教えません」
鳶色の大きな瞳を細めて、小さな悪戯をした少女のように口を閉じる。
冴子は気分が悪くなった。

「で、冴子さん。貴女はこのゲームで何人殺したの?」
「・・・・・・1人よ」
「あら、私と同じですね。もっと増やしていきませんか?」
ふうわり、と。風が吹く。
まもりは立ち上がりスカートを叩いた。また柵に近づいていく。
冴子は何故か立っていられなくなり、まもりの休んでいたベンチに座る。
まもりは陽光を背に。
冴子に影が射す。


唐突に。小さな囁きが冴子の耳に蘇る。

――怖いよ、お姉ちゃん。
――知ってる人がみんな、いなくなってしまったの。
冴子の体に小さな手が触れ、抱きつくと同時にすすり泣いた。
鈴の音が響くように。愛らしく。

汚い街。汚い人間の子。今のうちに始末しなければ。
あの時はそう身体が動いた。

まもりの笑い声。くすくす漏れる小さな音。冴子は我にかえった。
「何がおかしいの?」
まもりの態度に冴子が剣呑な光を宿す。
「ふふ・・・だって、いいもの見つけたから」
まもりは上機嫌で丘の下を指差した。

「ねえ、冴子さん。あそこに子供が2人、いるでしょう」
冴子が下を見る。たしかに少年が2人、線路沿いを歩いている。

「ふふ、ここから良く見えるでしょう。人の通り道は道路だけとは限らないんですよ」

まもりの白く暖かい手が冴子の手に触れた。

「知ってますか、冴子さん。人の手は緊張してると温度が下がってしまうの。
 筋肉が収縮すると血液の流れが悪くなって末端までまわらなくなってしまうんですって・・・」

まもりは冴子の耳の間近で呟く。

――冴子さんの手。とても冷たいわ・・・。
――手の冷たい人は心が暖かいって話、聞いたことありますか?
――きっと他人のことを考えすぎて緊張してしまってるんですよ。
「冴子さん」
鈴の音のような小さな囁きが冴子の耳に語りかける。

「あの子たちを殺すのね・・・・・・」
こくり、とまもりが小さく頷いた。
「でも、すぐに殺しちゃだめですよ。上手く仲間の情報を聞き出すんです。
 警察官なら、得意でしょう?」
「・・・・・・」
「迷ってるんですね。人間に絶望したとか言いながら冴子さんは後悔してる」
「そんなことはないわ!私は・・・」
まもりは挑発するように冴子のしなやかな指に自分の指を絡めた。
「ほら、手が冷たい。貴女は嘘をついてる。本当は殺し合いなんか嫌でたまらないくせに」
「何を言ってるの・・・私は嘘なんてついていない!汚らしい人間に絶望してるのよ!」
まもりが笑う。楽しげに。
「そうですよね。馬鹿なことをききました。気を悪くしないで下さいね」
冴子は苦しげ息を吐き、まもりの手を振り払う。
「あの子達は冴子さんにまかせます。男の子を2人も相手にするのは不利かもしれないけど
 何かあったらすぐ手伝いに行けるよう、ここで見張ってますから」
「共倒れでも狙うつもりかしら」
「あははっ・・・・冴子さんたらおかしい。疑われてしまうなんて私もまだまだですね。
 だったら、これを持っていって下さい」
まもりは常に肌身離さず持っていた自分の魔弾銃を冴子の手に握らせた。
「・・・なんのつもりよ」
冴子の言葉にまもりが不思議そうに問いかける。
「だって貴女は警察官なんでしょう?銃を持つのが自然だわ」
まもりはさらにバックから小さな塊を1つ取り出す。
「予備の弾丸。大事に使ってくださいね。1発目はもう装填してあります」
「いいのかしら。銃口があなたに向かうかも知れないのよ?」
相手にしたくなかったが、冴子は挑発をせずにはいられなかった。
まもりはまた、微笑み、小さく可愛らしい声で答えた。

「貴女に殺された人―――きっとすごく酷い人だったんでしょうね。
 ・・・この私のように」

冴子はまもりから離れた。嫌悪で顔が歪んでいる。
まもりの鳶色の瞳を嬉しそうに細めた。
まもりの手には毒蛇の鎖が握られている。
「かわりに、私にはこの首飾りを下さい。貴女が戻るまでお守りにするわ」
「返しなさい!手癖の悪い娘ね!」
まもりは猛毒の首飾りにくちづける。思わず冴子は反射的に叫んだ。
「止めなさい!それには毒が・・・」
冴子はしまったと後悔した。
まもりが笑う。
「だと思ってました。でなきゃ、こんな小さな武器で、あの紳士さんに立ち向かっていけませんものね」
先に殺すべきはこの少女だ。冴子は確信する。
だが――銃を向けても。
「ほら、冴子さん。早くしないとあの子達が行ってしまいますよ」
この少女は暖かく微笑んだまま冴子を見ている。

「あの子たちも。きっと何かの罪を犯しているんだわ」
毒が囁く。
「冴子さん。断罪するのは貴女の仕事よ。
 罪を洗いざらい吐き出させて、汚れてしまった彼らを楽にしてあげて」
毒が囁く。

「行って。冴子さん」
毒が囁く。鈴の音のように。

冴子は自分の胸の奥で何かが再び大きく引き裂かれてくのを感じた。


「さあて、どうなるかしら・・・」

眼下には少年たちの元へ向かう冴子の後ろ姿。

(1人目は勢いでなんとかなってしまうものよ。肝心なのは2人目から)

その歩調は、迷いなどないように見える。

(冴子さん。貴女が本当に使える人間かどうか試させてもらうわ。
 演技、交渉、戦闘。貴女はひとつも私の力になってはくれなかった。
 あなたの投げやりな態度は足手纏いにしかならない。絶望してるといいながら、本当はまだ迷っている。
 あの京都の紳士さんの時だってそう。貴女には必死さがない。人を騙してでも生き残る覚悟が無いのよ。
 今の貴女はただ激しく憎んでるだけ。それだけじゃ駄目なの。私には足らないの)

(殺しなさい。殺して殺して、何も感じなくなるまで殺すのよ)

(合格したら、そのときは)

「キスでもしてあげようかしらね」

まもりは首飾りを弄びながら無表情で呟いた。





【京都と大阪の境/午前】

【姉崎まもり@アイシールド21】
 [状態]:腹部に打撲、若干の疲労
 [装備]:中期型ベンズナイフ@ハンター×ハンター、
     毒牙の鎖@ダイの大冒険(一かすりしただけでも死に至る猛毒が回るアクセサリー型武器) 
 [道具]:ジャムパン半分  
     魔弾銃専用の弾丸@ダイの大冒険:空の魔弾×1 ヒャダルコ×2 イオラ×1 キアリー×2 ベホイミ×2
 [思考]:1野上冴子を利用する(以前より強く決意)
     2セナ以外の全員を殺害し、最後に自害

【野上冴子@CITY HUNTER】
 [状態]:人間に絶望。(難しいが説得は一応可能?)
 [装備]:魔弾銃@ダイの大冒険:空の魔弾×1 メラミ×1
 [道具]:荷物一式、食料二人分
 [思考]:1少年達を尋問。その後、殺害  
     2人間を全て殺す。

【志村新八@銀魂】
【状態】中度の疲労。全身所々に擦過傷。特に右腕が酷く、人差し指、中指、薬指が骨折。
【装備】拾った棒切れ
【道具】荷物一式、 火口の荷物(半分の食料と水を消費)
【思考】1:藍染の「脱出手段」に疑問を抱きながらもそれを他の参加者に伝え戦闘を止めさせる。
    2:坂田銀時、神楽、沖田総悟を探す。(放送は信じていない)

【越前リョーマ@テニスの王子様】
【状態】健康
【装備】テニスラケット、両さんの自転車@こち亀
【道具】荷物一式(半日分の水を消費)、サービスエリアで失敬した小物(手ぬぐい、マキ○ン、古いロープ
    爪きり、ペンケース、ペンライト、変なTシャツ
【思考】1:藍染の「脱出手段」に胡散臭さを感じている。
    2:情報を集めながらとりあえず地元である東京へ向かう。
    3:仲間との合流。 竜崎桜乃の死は信じない(認めていない)
     
      *越前は竜崎が火口(彼の名は知りません)の手によって殺害された可能性があると思っています。
      *姫路駅付近にある埋葬された稲葉響子には気付きませんでした。
      *神戸方面へ北上中。


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