0094:少年(15)
東の空がうっすらと明るくなり始める。
じわりと上昇する気温に、跡部、一輝、ナルトの3人はそれぞれに元いた世界の夏を思い出していた。
福岡県の市街地。
食料品や水を期待して入り込んだスーパーマーケットには、予想通りと言うべきか、そういった類の物は
一切見当たらない。
冷蔵庫の中も食料品棚も全てカラ。
奥の事務所にあったパソコンも当然のように動かず、跡部の舌打ちが強くなっただけだった。
それぞれに――――主に跡部とナルトが――――数10分をかけ店内を探し回り、何となく役に立ちそうな
日用品を集める。
フォークが10本。
小さなソーイングセット。
ノートとペン。
ロープ2本。
半透明のゴミ袋10枚入りが2パック。
以上が彼らの収穫である。
一輝は「聖闘士に武器はいらない。これはもはや常識!」と言って受け取りを拒否したので、それらは跡部
とナルトで振り分けることになった。
とりあえずの行動を終えた三人が店内の片隅で情報を交換し始めてから、そろそろ1時間が経とうとしている。
互いの世界のこと。
自分の知っている現状況。
知り合い達のこと。
そんな会話の中で偶然にも同じ年であったことが発覚した3人には、奇妙な連帯感が生まれ始めていた。
険しい瞳で二人を見つめる跡部に、ナルトは力を求めて里を抜けた仲間を思い出し。
とても15歳には見えない風格の一輝に、跡部は自分と唯一無二の試合を繰り広げた青学の部長を思い出し。
騒がしいくせに真っ直ぐなナルトに、一輝は腹違いの弟でもあるペガサスの聖闘士を思い出し。
それぞれがそれぞれに――――自分の知っている人物の面影を見つけていた。
「主催者の1人……ハーデスとかいうヤツのこと、知ってんのか?」
跡部にそう尋ねられ、一輝は「うむ」と頷く。
「アイツは冥界の王、ハーデスだ。アテナの勝利の女神(ニケ)を受け消滅したものだと思っていたが……」
そこで言葉を切り、一輝は険しかった表情をさらに険しくする。
相当に激しかったであろうその戦いを思い出しているのか、一輝の眉間には濃い皺ができていた。
(チッ…想像の域を超えているな)
そんな一輝の様子を眺め、跡部は考える。
地上を護る女神アテナと冥王ハーデスの戦い。
アテナを護る為に存在する、聖闘士と呼ばれる戦士。
そのどれもこれも、跡部の想像できる範囲を飛び越えている。
まだナルトの言う「忍者」の方が想像しやすいくらいだ。
……これから先……これ以上に自分の想像を超えた出来事が起こるのだろうか。
その時、果たして自分は冷静さを保っていられるのだろうか。
不安を吹き飛ばすように舌打ちをし、跡部は再び口を開いた。
「……単刀直入に聞く。テメェはあいつを倒せるのか?」
――――あの、絶望的に強大な力を持った主催者の一人を本当に倒せるのか。
挑むような跡部の視線を、一輝は真っ向から受け止め頷き返す。
「倒す。俺はアテナの聖闘士だ。あいつを倒すのは俺たち聖闘士の使命なのだ」
はっきりと言い切った一輝の言葉に迷いは感じられず、跡部は一輝が本気でハーデスの打倒を考えているのだ
と確信した。
「使命か……」
一応、普通の中学生である自分にはあまり縁がない言葉である。
同じ年のこの男が何の迷いもなくそれを遂行しようとしている事実に、跡部も自分に言い聞かせる。
(俺様も腹括るしかねぇな。これからどうするにしろ……やられたらやり返す覚悟を決めるしかねぇ)
ゲームに乗っている人間がいるのかはわからない。
だがこの状況では、いると仮定すべきだろう。
もしゲームに乗ったヤツに出くわした場合……まだ死にたくない以上、襲われたらやり返すしかない。
軽く舌打ちをしたところで、跡部は自分の横でなにやらガザゴソ音がしていることに気が付いた。
隣を見ると、ナルトがなにやら背を向けている。
「……てめぇ、ナルト!なに勝手に人の持ち物あさってやがる!」
「俺ってば、飯食おうと思ったときにここに連れてこられたからハラ減ってるんだってばよ……」
「知るか。勝手に餓えてろ」
ナルトの訴えをあっさり切り捨てて荷物を取り返し、跡部は一輝に視線を戻す。
憤慨したナルトが騒ぐが、当然無視だ。
「どうやって倒すつもりなんだよ?」
「聖闘士は武器は使わん。己のこの肉体が武器なのだ」
「跡部ってば性格悪いってばよ!」
「うるせぇ黙れ。……聖闘士か……」
ナルトをあしらいつつ、跡部は再び考える。
彼の話に出てきた他の聖闘士――――星矢、サガ、それに微妙だと注釈をつけられたが一応デスマスクという人物
も恐らくハーデス打倒に立ち上がると思われる。
聖闘士という人種がどれほどの力を持っているのかはわからないが、少なくとも自分のような一般人よりは戦いに
慣れていることはわかる。
この世界に招かれた聖闘士が全員集まれば、ハーデスをはじめとする主催者達を倒せるのだろうか。
「そういや、テメェら聖闘士はどうやってハーデス達の居場所を突き止めるつもりなんだ?」
「小宇宙を燃やして奇跡を起こす」
「……そうかよ」
(小宇宙ってのは何なんだ?人を探せるモノなのか?奇跡をそんな簡単に起こせるモノなのか?)
突っ込みたいところは沢山ある。
だが、きっぱりと断言した一輝にそれ以上質問する気をそがれた跡部は、聖闘士には自分には想像もできない何か
不思議な能力があるのだと無理矢理自分を納得させることにした。
「あ――――っ!!」
突然ナルトが大声を上げた。
一輝が素早く周囲を見回し異変がないことを確認する。
不覚にも体をビクリとさせてしまった跡部は、声の主をキッと睨み付けた。
「うるせぇんだよ、テメェは!一体なんだよ?!」
「一輝の武器、見せてもらってないってばよ!」
「…ああ…」
大声を出すほどのことではないが……確かに重要なことだ。
跡部の支給品は滴型のペンダント・アバンのしるし。
ナルトの支給品は金と銀の羽が5本ずつ。
どう考えても戦闘には不向きである。
行動を共にする以上、これで一輝の支給品が役立つモノでなかったら色々と考えなければならない。
二人から視線を向けられた一輝は、無言でカプセルを放り投げた。
「俺の支給品はこれだ」
現れたのは大きな手袋の様な物――――篭手とでも言うのだろうか。
(防具の一種か?)
形状から判断するとそう思えるが…。
「なんでも衝撃貝(インパクトダイアル)という物が仕込まれているらしい」
そう言いながら一輝は説明書を二人に示してみせる。
与えた衝撃を吸収し、自在に放出する貝殻を掌側に仕込まれた篭手。
その威力は、吸収した衝撃が強ければ人を死に至らしめるほどの物だと説明書には記載されている。
「……なるほどな。ようやく武器らしい物が出てきたってわけか」
一通り説明書を読み終えた跡部はニヤリと笑った。
この衝撃貝とやらが実際にどれ程の威力を持つのかは使用してみないとわからない。
だが少なくとも何もないよりはマシだろう。
後は自分の武器を手に入れることができれば……。
ひとまずの懸念材料がなくなり、跡部は支給された時計を確認した。
放送とやらの時間が迫ってきている。
「とりあえず、放送を聞いた後にここを移動するぞ」
跡部の言葉にナルトが応えようとした時――――。
――――――――ダァァ……ン…………
何かが破裂するような音が響き渡った。
「な、なんだってばよ?!」
「……近いな」
油断なく周囲を見回し、一輝が呟く。
程なくして二度目の音が響く。
「……銃か」
跡部の言葉に一輝は頷いてみせ、ナルトは不思議そうな顔をした。
「……行ってみるか?」
低く問いかけた跡部に、一輝とナルトは無言で了承する。
手早く荷物を片づけた3人は、慎重にスーパーマーケットを飛び出した。
時刻は間もなく、午前6時を迎えようとしている――――――――。
【福岡県(都心部外れ)/黎明〜早朝】
【跡部景吾@テニスの王子様】
【状態】健康、襲われたらやり返す覚悟を決めた
【装備】なし
【道具】荷物一式(少量の水を消費済み)、アバンのしるし@ダイの大冒険
フォーク5本、ソーイングセット、ノートとペン、ロープ、半透明ゴミ袋10枚入り1パック
【思考】1.銃声のした方へ行ってみる
2.身を守る武器を手に入れる
3.乾と越前を捜す
【一輝@聖闘士星矢】
【状態】健康
【装備】無し
【道具】荷物一式、衝撃貝(インパクトダイアル)の仕込まれた篭手@ワンピース
【思考】1.銃声のした方へ行ってみる
2.ハーデスを倒す
【うずまきナルト@NARUTO】
【状態】健康 ただし空腹
【装備】無し
【道具】支給品一式(1日分の食料と水を消費済み)
ゴールドフェザー&シルバーフェザー(各5本ずつ)@ダイの大冒険
フォーク5本、ソーイングセット、ロープ、半透明ゴミ袋10枚入り1パック
【思考】1.銃声のした方へ行ってみる、可能なら空腹を満たす
2.サクラ、シカマルを探す
3.主催者をやっつける
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