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0074:狂える瞳、支配する瞳、決意の瞳



「てっててて……何だったんだあいつは?」
蹴られた脇腹をさすりながらスヴェンは当てもなく歩いていた。
イヴを探す。
とは言っても探す術を彼は持ち合わせていない。
そもそもこんなクソッタレなゲームでそんな術が簡単に見つかれば、信頼できる仲間同士が直ぐ集まる事になる。
そんなことはバーンと名乗った奴等にはマイナスでしかない。
「日頃の行いが物を言う、か」
こうなったら頼るのは運しかない。
この島がどれだけでかいのかは地図を見ただけでは実感が湧かなかった。
だがその島の中に大量の人数が放り込まれて殺し合いを強制させられているのは現実だ。
「なら、急がないとヤバイな」
現に先程自分はこのゲームにのっていると言う男に出くわした。
しかも始まって直ぐ出会った今の所最初で最後の奴がそれだ。
状況に耐えるとかそんな問題じゃない。
何人この島に殺し合いにのっている奴がいるかわかったものじゃないのだから。
焦りと共に足は速さを取り戻す。
「――ったく、この際ついでにリンスにも恩を売っておくか」
イヴはおろかリンスもこの島じゃ危険だろう。
どちらに先に合うか解らないが困っている奴はなるべく助けたい。
口と心の差に、正直でない自分を見つけ苦笑した。


あれから何分走ったであろうか?
横に連なっていた民家が次第に減っていき、変わりに木々が増えてきた。
とは言っても月明かりで見える範囲内でしか変化は感じられないのだが。
静かな街。
沢山の民家が連なっていたのに灯りも人の気配もなくただ其処に建っていただけ。
その街も終わりを告げ目の前に茂る木々の中にスヴェンの足音だけが静かに木霊していた。

ふと自分の足音以外に気配を感じ、慌てて近くの木に隠れるてその気配を探る。
音一つなく無機質にも感じるこの世界。
気配の正体は直ぐに掴めた。
「――女性……か?」
向こうから黒ずくめの女性が一人歩いてくる。
「隙がない?いや、逆に隙だらけなのか?」
今一その女性が解らない。
一見すると態度と表情から落ち着きが感じられ、歩き方も隙が無いように見える。
しかしそれとは逆に手ぶらで、危機感を持ち合わせていない様にも見え隙だらけにも思える。
「この手の場合要注意だったりするんだがな……」
スヴェンの中で黒ずくめの女性がリンスと被る。
彼の知るリンスも裏の社会の住人である。
一通りの自分の身を護る術は身に付けている。
「が、このゲームじゃヤバイと言ってたのは俺か」
帽子を被り直し、背広を直してから、向こうから歩いてくる女性に両手を挙げながら姿を見せた。
もし何かあっても予見眼や支配眼がある。
助けられる女性を見過ごすのは紳士として出来なかった。
「俺はスヴェン、別にあんたにどうこうする気はねぇ」
「――ロビンよ」
ロビンと名乗った女性も両手を挙げげる。
ひとまず相手に攻撃の意志がないことを読みとり、ほっと溜息を付く。
「お互い変なことに巻き込まれたな」
「えぇ、その様ね」
彼女は両手を挙げながら此方に歩み寄ってきた。
見た限りではバックもない。
胸やポケットに銃らしき物を入れている様子もない。
恐らくカプセルの中に全て詰め込んでいるのだろう。
そう判断してスヴェンは彼女に少し気を許した。
「解っているだろ?この島は危険だ、先約がいないなら俺と一緒にデートでもする気はないかい?」
目の前の女性に問いかける。
「俺の目的は人捜しだ、それをしながらで良いなら貴方をエスコートする事も出来る」
相手の表情を窺いながら更に続ける。
「そちらも人捜しだとしても手伝えると思う、この島じゃ一人や二人仲間を探すのもそれ以上探すのも同じだからな」
女性の表情が仲間と言う単語で一瞬変化して俯いたのをスヴェンは見逃さなかった。
「そうそう、仲間の一人はイヴって言う小さな女の子なんだが何処かで……」
「――ありがとう、貴方の気持ちは受け取って置くわ――永遠に」
そう言いつつ彼女の表情が再び変化する。
彼女が顔を上げた時確認したソレは悲しさを携えた狂気。

「――のってないんじゃ無かったのか?!」
相手に問いかけのではなく、判断をしくじった自分への問いかけ。
慌てて距離を取るために後退しながら眼帯を外す。
即座に予知眼を発動させようとする――が、不発で終わる。
「何故だ?!」
最初に対峙したクロロに技を盗まれたと知らないスヴェンは混乱しながらも目の前の女性を凝視する。
しかしロビンは手を挙げたままその場から1歩も動いていなかった。
まるで自分が感じた感触が錯覚だったかのように。
だが目の前の彼女の眼は狂気に歪んだ先程の眼と変わってはいなかった。
「仕方ない……」
体力を激しく消耗するがしょうがない。
相手の狂気だけは本物だ。
何かがあってからでは遅い。
スヴェンは不発に終わった予知眼から支配眼へと変化させる。

急に自分の周りの世界の速度が変化する。
否、彼自身の速度が変化しているのだ。
世界を超スロースピードで認識させ、自分自身はその中でいつもの速さで行動が出来る切り札中の切り札。
勿論自分自身の限界を超えた速度で行動する訳だから身体に必要以上の負担がかかるので諸刃の剣だ。
四方八方に気を張り巡らせながら状況を確認する。
周り360度、そして上と下。
何処も変化はない。
目の前に立っている女性も再確認したが動きは見えない。
だが止まった時間の中でもスヴェンの視線とロビンの視線が交差する。
全てが遅く感じられる世界の中で唯一その狂気だけが存在感を増していた。

気は抜けない。
体力面への更なる負担を覚悟して再度周りに集中する。
すると月明かりにより自分の後方で何かが光ったのが感じ取れた。
「背中かっ!」
身体を捻り振り向いた先には夜空に浮かぶ月に照らされ反射した剣が此方を向いていた。
自分の背中から生えた手に握られた剣が迫る。
が、本来ならば必中のタイミングであったそれは、支配眼を発動したスヴェンによって叩き落とされる。


「これはあんたの仕業かい?」
息も切れ切れに背中から生えた手を掴みながらスヴェンは目の前の女性に尋ねた。
流石に支配眼発動下の行動は身体に堪えた。
支配眼を解除して降魔の剣を踏みつけながら目の前のロビンを見据える。
「あんたもやっぱりそうなのか……このクソッタレなゲームにのっているのか」
「私はただ生き残りたいだけよ」
瞳の中に悲しさを携えたままロビンはそれだけ答えた。


「手の内は全て晒された――終わりだ」
掃除屋スヴェンは未だ手を挙げたままの女性に向かって走り出す。
「女性には手を出したくなかったんだがな、悪いが気絶させて貰う」
女性の目の前まで走りきった時、突然目の前に何かが立ちふさがる。
「おっと、俺が相手だ」
スヴェンが振り下ろした拳を軽く受け止めその男はニヤリと笑った。
彼が拳を受け止めた腕に付けていたのは、支給品『ミクロバンド』。
腕時計の様な形をしていて、装備者を自在に一瞬で大きくしたり小さくしたり出来るアイテム。
先にスヴェンの気配に気が付いていたロビンが勝利マンを予め小さくさせて切り札としていたのだった。

だがそんな事を知る由もないスヴェンは突然の乱入者に驚いて咄嗟に二度目の支配眼を発動させる。
こうなったら超スピードで逃げるしかない。
力を振り絞り拳を握っている相手の指を引き剥がそうと苦戦する。
しかし世界がどれだけ遅くなろうとも力の差だけは変わらない。
体力が持たず二度目の支配眼の時間が終わったが、目の前の状況はなんら覆せなかった。
そのまま勝利マンに羽交い締めにされるスヴェン。
「――貴方が私を信用してくれた事感謝しているわ、ジェントルマン」
地面から延びた手が落ちていた降魔の剣を拾い、そのままスヴェンを斬りつける。
頭の中からイヴの事が消えていく。
「なら何故こんな真似を……?」
薄れ逝く意識の中、戦闘が終わった今でさえ悲しい目をした女性にそう問いかける。
「――人を信用して、裏切られた時が怖いの……あれだけは、何度味わっても慣れる事がないのよ」
理性が消えていく中、まずは疲労に身体を乗っ取られ眠りにつく。
「約束通り貴方の探していた子を一緒に探してあげるわ」
疲労に意識を奪われ崩れ落ちるスヴェンを受け止めながらロビンは言った。
――人捜しをしながらでも良いなら護ってやる。
もう彼は裏切らず自分を護ってくれる、信用のおける仲間だ。
だからその言葉は彼女の中で仲間との約束に変わっていた。





【群馬県と茨城県の境目付近/黎明〜早朝】

 【ニコ・ロビン@ONE PIECE】
 [状態]:健康
 [装備]:降魔の剣@幽遊白書
 [道具]:荷物一式
 [思考]:1絶対に裏切らない(妖怪化で)仲間を増やす
     2仲間を増やす中でイヴを探す
     3死にたくない

 【勝利マン@とっても!ラッキーマン】
 [状態]:妖怪化
 [装備]:ミクロバンド@ドラゴンボール
 [道具]:荷物一式
 [思考]:妖怪化しロビン絶対

【スヴェン・ボルフィード@BLACK CAT】
 [状態]:妖怪化、激しく疲労、軽い睡眠中、予見眼使用不可
 [装備]:無し
 [道具]:荷物一式(不明)
 [思考]:妖怪化しロビン絶対


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