異常なる力―化け物の証



「――霊丸っ!!」
目の前の大木を狙い指先に霊気を込め打ち出した。
指先から放たれる光は幹を抉り中程で四散する。
「ちぇっ、これだけかよ」
幹に空いた直径5cm程の穴を見てそう呟いた。
此処に来る前までならばこの程度の木なら易々と撃ち抜けただろう。
いや、そもそも木の跡形も残らない位の威力は楽々と出来たはずだ。
その上やけに体力の消耗も激しい。
まるで昔の自分に逆戻りしたみたいだ。
浦飯幽助は手のひらを握ったり開いたりして感触を確かめた。
「だけど、これは変な武器よりゃ良いわ」
バックから六角形の物体――核金を取り出し握りしめた。
とたんに今消費した霊力と体力が回復するのが自分でも解る。
つまりは威力は弱くなったがその分回数に拘らず連射が出来る。
嫌な野郎と出会っても追い返す程度は十分だろう。
「――嫌な野郎か……」
馬鹿笑いした桑原の顔と無表情な飛影の顔が思い浮かんだ。
が、飛影の方はフンと鼻で笑うとそっぽを向いて消えてしまった。
「糞ー!思い出すだけでも嫌な野郎だ!」
だがあの飛影のことだ今頃殺し合いをしている人間をよそ目に木の上で寝ていたりするんだろう。
幽助は飛影が殺し合いを今頃楽しんでいるとは考えもしなかった。
彼が知る飛影は彼の傍にいて影響を受けたからこその姿だったとはつゆ知らず。
「とりあえずあの馬鹿でも探すか……」
あんな馬鹿でも死なれちゃ目覚めに悪い。
それにあいつの次元刀ならもしかしたら……
「俺は此処だ!気が付け桑原!!」
そう言いつつ上に向けて渾身の霊丸を放つ。
頭上に茂る枝葉を巻き込み夜空に煌めく一直線の柱。
それは脱出への期待を抱き桑原に送った狼煙だった。
(刀か?!)
一瞬重なり合う飛影の姿。
勿論スピードは全然違うし、構えも違う。
だがその目と同じく鋭い殺気が獲物を物語っていた。
下段に構えてあったはずのソレがいつの間にか上段に切り替わっていて空中で弧を描きつつ幽助に襲いかかる。
紙一重の所で避け大気が切り裂かれる音を聞き少年の持っている獲物の正体が確信へと変わる。
「――火の玉みたいなのを打つ先輩や分身できる先輩なら知ってる。けどあんた達は根本的に何かが違う」
幽助が避けた方向へ時間をおかず二撃目、三撃目と襲いかかる。
素振り自体は根本的に剣のそれとは違い隙も多く実践では稚技に等しい。
幾らスピードが遅くなったとはいえ、間合いを一回掴んだ刀を避ける為の動体視力は未だ健在だった。
「最初の禿だって、それを殺した奴だってそうだ。そいつ等化け物が人を殺す」
「俺はむしろそいつ等をぶっ飛ばす方だ!」
少年、越前リョーマの見えない攻撃を避けながら幽助は叫んだ。
「――俺はまだ死にたくないんでね」
紙一重で避け続ける幽助の動作をステップを踏みながら瞬時に察し、その方向へと一撃を繰り出す。
「この分からず屋が!」
その一撃が額を掠め、遂に切れた幽助がリョーマの腹にフックを決める。
勿論手加減をしてる訳だがリョーマの軽い体は宙に浮いた。
「――が、がはっ……」
鳩尾に一発を喰らいその場で悶絶するリョーマ。
腹の中の物を全てその場でぶちまける。
「テメェみたいな奴はどうとでもなりやがれ」
そう言い捨てて幽助はその場を去ろうとする。
「桑原に場所を伝えようとしたのが失敗だったか」
あまり物事を考えず行動してしまったことを後悔する。
だが、すぐさま気持ちを切り替えると桑原がいそうな方向を勘で探しそちらに進むことにする。
「!!」
だが後ろを向き一歩踏み出した所で後ろの変質した殺気を感じ取る。
さっきまでの殺気とは別人である。
まさかと思い後ろを振り向いた幽助だが、其処には意外な――否、思った通りリョーマが立っていた。
「お前も普通から比べれば十分化け物だぜ!」
手加減したとは言え先程のフックは常人なら数時間は起きあがれないだろう力はあったはずだ。
しかし、それをまともに喰らって尚、異常な殺気を向けるならば仕方がない。
左手で核金を握りしめながら、霊気を右の拳に集め始める。
核金の力により無制限となった霊気。
それの最低限の力だけ込め相手の方に拳を向けた。
「ショットガン!!」
拳から放たれる無数の光。
威力は霊丸のそれより弱く、狙いもつけにくいがその分数が多くかわすのがやっかいな必殺技だ。
流星の如く尾を引きながら何本かの光弾がリョーマに襲いかかる。
が、それを片足でスプリットステップをしながら瞬間的に横へと跳び逃げる。
そして着地する直前で何も無い筈の空間で刀を一直線に振るう。
だが同じような光景を一度目にしたことある幽助はそれの絡繰りを咄嗟に見抜き身体を半身捻る。
それと同時に自分が放ったはずの光弾が目の前を掠めて飛んでった。
「――がっ!」
一瞬気を抜いた瞬間腹部に激痛が走る。
対するリョーマはそのまま刀が届かない筈の場所で着地した俯せの体勢のままこちらに手を伸ばしている。
「――糞っ、テメェの方が心の底から化け物だ……ぜ」
腹部から流れる血が直線を描きリョーマの方に続いている。
見えない刀の峰を伝いきる前にリョーマは刀を横へと振るい、胴を分断させると共に血を払った。
「You still have lots more to work on ... (まだまだだね)」
紅い線が次第に短くなりついには柄の前で消える。
そしてそれと共にリョーマの殺気は消え膝から地面に崩れ落ちる。
無我の境地と幻想虎徹(イマジンブレード)Lv1の同時使用。
いや、無我の境地があったからこそ幻想虎徹のLv1が使いこなせた訳なのだが、その消耗具合はリョーマの体力を極限まですり減らして尚十分おつりがくる代物だった。
(くっ……)
本能なのかそれとも核金がリョーマを呼んだのか、空っぽの体力のまま地面を這いながら幽助の方へと進んでいく。
土に汚れ、血に染まる服。
リョーマは核金を握りしめた幽助の手の上に右手を伸ばすと同時に気を失った。
二人の手の下では『XLIV』と描かれた核金が静かに次の時を待っていた。





【宮城県の森/黎明】

 【越前リョーマ@テニスの王子様】
 [状態]:昏睡中(極度の疲労)(核金で少しずつ回復中)
 [装備]:幻想虎徹@BLACK CAT  核金『XLIV』@武装錬金
 [道具]:荷物一式
 [思考]:1人じゃない(超えし)者を見つけ次第この世界の悪と見なし排除する


【浦飯幽助 死亡確認】
【残り119人】
 


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